「はあっ、はあっ……」



少女はただひたすらに走る。その背に背負う、大きな罪のために。

少女は、国を追放された身。皆から、罪を犯した者と、掟を犯した者と呼ばれた。今まで親しかったはずの人間も、少女を冷たく突き放し
たのだ。



「……なんで、なんでなのよ……っ!」





―――犯罪者め。



―――近づくな。



―――掟を破り、あんなモノになった奴が、この国にいるんじゃない。





けれど、最も哀しきことは、自分の助けた親友に恐れられたこと。





―――いや、近づかないで。近づかないでよ、化け物……!





自分が望んだことなどではないのに、何故、自分がこうならなければならないのか。何故、親友にまで恐れられなければいけないのか。



「はあっ……うぅ……」



少女は嘆いた。自分が望んで起こした事ではない。なのに、何故。

少女の頬を、涙が濡らす。彼女は、次々に溢れてくる涙を、無理矢理手でぬぐった。けれど、一度流れてしまえばもう止まらない。



「うぅ……なんで、私がこうならなきゃ、いけないの……っ」



ただ、親友を助けたかっただけ。ただ、国のみんなを護りたかっただけ。

それなのに、何故こんな目にあわなければならないのか。



「全部…全部アイツの所為だ」



もう、自分は自分でなくなった。もう、自分は人間じゃないんだ。それもこれも、全てが、アイツの所為。

少女は、手を強く握った。爪が喰い込み、血が流れ、少女の走った道を、赤く濡らした。







全ての始まりは、三年前に起こった事だった。









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